「ユリゴコロ」に揺さぶられた
数年前の映画ですが、気になっていた「ユリゴコロ」を観ました。主なキャストは吉高由里子・松山ケンイチ・松坂 桃李さんです。物語にはゾッとするような怖さ、悲しさ、愛おしさが代わるがわる表れてきて、いったいこの話は何のジャンルなんだと思いながら惹き込まれて見入ってしまいました。
まず気になっていた理由は「ユリゴコロ」というタイトル。「揺れているこころ」のことかな?と思っていました。映画の始めの方に、幼少期に感情が欠落している主人公が、”ユリゴコロ” がないと精神科医に診断を受ける場面が出てきます。実際には、”ユリゴコロ” という言葉はなく、”(心の)よりどころ” を聞き間違いしているわけです。
”拠り所=安全基地(親の存在)” なるものがあるから、安心して子どもは周囲と関わりながら成長していけるのです。しかし、適切な拠り所を持たない主人公は自分をあやしてくれる ”ユリゴコロ” を求め、残酷な行為を繰り返していきます。グロさもありながら悲しくて泣けてくる、本当にカテゴリー分けし難い作品ではないでしょうか。
幼少期の主人公に自分を重ね、子どもの頃ガラスケースに入っていたフランス人形に向かってよく祈っていたことを思い出しました。あの子どもの頭が生み出した意味のないようなルーティンが、頼りない自分を励まし落ち着かせてくれたのでしょう。
今では壁に貼ってある御札に祈る見事なオバサンへと変貌しました。それでも生きづらさは相変わらずなので、変なことをしないためにも心の拠り所は常に必要ですね。「ユリゴコロ」、とても良い映画でした。