ホントニアッタコワイ話2

第2話:ホームドアのスニーカー

 コロナ禍で世間が混乱し、ご多分に漏れず失職した末に仕事にありつけた頃のことである。23時過ぎの電車内はガラーンとしていて、人込みが苦手な人間には好都合とばかり快適な通勤環境に変わっていた。やがて乗り換え駅で次の電車を待っていると、目の前のホームドアに自分の下半身が反射して映っているのが見えた。そしてそのすぐ後ろに白いスニーカーを履いた足がじっと立っているのに気づく。

 こんな空いてるのに、ソーシャルディスタンスを知らないのかと不快さを感じ、そっと振り返ってみると誰もいない。あれ?と思った時、ちょうど電車が滑り込んできた。もしかして電車が来たので、すごい勢いで他の車両のドアへと行っただけかもしれない――

 明るい車内灯の下にマスクをした無言の乗客がまばらに座っている。それを見て何かわからないが、無事に逃れたような気がした。幽霊から?失業から?または死の誘惑から?自分はまだ社会の中で生きているのだと安堵をし家に帰った。

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